『経済学で出る数学』 一次関数と市場メカニズム
1.1 関数と変数
・需要関数は「与えられた価格のもとでどれだけ買いたいか」という、P→Qの関係を、逆需要関数は「ある一定量の需要を満たすためには価格をいくらにすればよいか」というQからPへの関係を考える。
・経済学のグラフでは縦軸に価格を、横軸に数量をとる。
・x→yへの関数fに対し、y→xを与える関数を逆関数と呼び、f^-1と表記する。
・逆関数のグラフはもともグラフ上でx軸とy軸を入れ替えて、45度線で折り返すことで描ける。
1.2 比例関数の性質
・一次関数の定数項が0のものを比例関数と呼ぶ。
・比例関数は線形関数と呼ばれ、線形性の性質を満たす。
1.3 連立方程式と市場均衡
・需要と供給による分析とは連立方程式を解くこと。
・一つの市場だけでなくすべての市場の需要と供給を一致させる価格は理論上存在する。
1.4 グラフと余剰分析
・需要曲線は、価格に応じて市場全体の需要量がどう変化するかという関係を表す一方で、実は商品一単位あたりの支払許容額を高い消費者から順に並べていった曲線とも考えられる。
1.5 もう少し練習
・生産者の一単位あたりの費用が一定のとき、もしも価格<費用なら生産量は0となる。逆に価格<費用なら生産量は無限大になる。なぜなら企業は生産量を無限大に増やすことで利益を際限なく大きくできるからだ。これを裁定という。価格=費用のときは生産量は一意には定まらない。
・経済学上の費用は会計上の費用とは異なる。経済学上の費用は常に機会費用(その生産を行わなければ得られた利益)を指す。
『意思決定のための「分析の技術」』 後正武
僕はコンサルタントではないけれど、この本に書いてある知識はきっと数年後に役立つときが来るだろう。そこでこの本の構成と紹介されている分析手法をまとめておきたい。
◆序章 分析とは何か
・分析とは、「物事の実態・本質を正しく理解するための作業」
◆第一章 「大きさ」を考える
・まず全体像を考える
・80対20の法則
・感度分析
・資源配分の面積図と棒状グラフ
・クリティカルマス
◆第二章 「分けて」考える
・マーケットセグメンテーション
・MECEに分ける、マネジメントインプリケーションを考えて分ける、全体を把握して検討作業を正しく位置付ける
・多元の要素を二次元に絞り込む
◆第三章 「比較して」考える
・目的に応じ、適切な枠組みを用いて、アップルツーアップルで比較する
・ギャップ分析
・コストのミクロアプローチとマクロアプローチ
・インダストリーコストカーブ
・シェアの比較
・ソフト要素の比較
・エクセレントカンパニーの八要素
◆第四章 「変化/時系列」を考える
・インプリシットストラテジー
・現在の100として過去にさかのぼっていく
・季節変動
・移動平均
・悪化分析
・他社比較と時系列分析の併用
◆第五章 「バラツキ」を考える
・等シェア線分析
・ラーニングカーブ
・BDP(ベストモデレイテッドプラクティス)
・まず平均以下を平均に。次に平均を平均以上に
・分類してそれぞれに対策を
◆第六章 「過程/プロセス」を考える
・プロセスから因果律を考える
・フローアウトアナリシス
・スループットを考える
・漏れ分析
・ビジネスシステム
・KFS
・レバレッジポイント
・フィックス、バランス、リデザイン
◆第七章 「ツリー」で考える
・ロジックツリー
・イッシュ-ツリー
・業務ツリー/テーマツリー
・ディシジョンツリー
◆第八章 「不確定/あやふやなもの」で考える
・信頼性のレベルによる情報の分類
・ロジックとフレームワークの活用
・プロセスの活用
・多数の知恵を活用する(デルファイ法)
◆第九章 「人の行動/ソフトの要素」を考える
・枠組みの工夫
・事実を把握するための工夫
・あらゆる情報を動員する工夫
・データや情報を効果的に用いる工夫
・先人の知恵や諸学問分野の成果と学説の利用
◆終章 コンサルタント能力の全体像と分析の位置づけ
・コンサルタントとしての基本姿勢・態度
・問題解決作業を進めるためのプログラム、知識、概念など
・チーム運営の能力・技術
・事実の把握、分析の手法、技術
・変革推進のための考え方、手法
『沖縄文学選-日本文学のエッジからの問い』 岡本恵徳・高橋敏夫編
三月に沖縄へ旅行した。高校の修学旅行も沖縄だったのでこれが二度目であったが、そこで初めて目にしたのは、表面上は本土と同じように振る舞っていても、どこか深淵では決定的に異なった感覚をもった人々、土地、文化であった。
最近では報道で沖縄の話題が取り上げられることが多い。本土の人間は沖縄のことをわかったふりをしながら、「それでも」と論理的に彼らを追い詰める。論理というのは非常に強力なもので、時としてそれは人間を窒息死させてしまうことすら可能だ。
私はそんな論理の恐ろしさを何処よりも知る沖縄の、感性の発露をのぞきたいと思い、旅行から帰って早速この本を読みだした。
本には明治時代から現代に至るまでの沖縄文学の挑戦と革新、そして葛藤の記録が収められている。それはかつて客体でしかなかった沖縄文学が、次第に主体性を獲得し、本土へ牙をむいていく過程でもある。
個人的には崎山多美の『風水譚』(1997)が強く印象に残った。抽象的で幻想的な筆致のこの作品は、あからさまに悲劇的でないところが良い。しかし確かにこれは沖縄が持つ歴史を感じさせてくれる。
もちろんこの本だけで沖縄のことが分かったような口がきけるわけではないし、恐らく何年かかっても本土生まれの私には沖縄を分かることなどできない。ただその努力は必要だし、決して無駄ではないと思うのだ。それは現代の日本に生まれた私の義務でもある。
マンキュー経済学 マクロ編 -13-
-生産の費用-
本章では企業の行動をより詳細に調べる。さらに価格や数量に関する企業のけっていがどのように市場条件に依存するかを研究する産業組織論の分野を紹介する。このとき、企業の費用は生産や価格を決定する際の重要な決定要因である。
①費用とは何か
・総収入、総費用、および利潤
企業が生産物の販売によって得る金額のことを総収入という。企業が投入物に支払う金額のことを総費用という。利潤は企業の総収入から総費用を差し引いたものである。
・機会費用としての費用
経済学では企業の生産費用について話す際には、財・サービスの生産を行う際のすべての機会費用を含んでいる。費用の中には、お金の支払を伴う「明示的費用」とお金の支払を伴わない「潜在的費用」がある。
・機会費用としての資本費用
会計士はこの明示的費用のみにスポットを当てるが、経済学者はそうではない。例えば、A氏がB氏から工場を買い取るために30万ドルを支出したとしよう。もしそうせずに、ヘレンがそのお金を5%の利子が付く定期預金に預けておけば、彼女は年間15000ドルを得ることができた。経済学者はこの年15000ドルも、工場を買い取るための費用と考える。
・経済学上の利潤と会計上の利潤
会計士は潜在的費用を考慮しないので、経済学上の利潤とは異なる額がはじき出される。
②生産と費用
企業の生産過程と総費用の関係を調べよう。ヘレンの工場を例にして考える。この工場の規模は固定されており、クッキーの生産量は労働者の数を変化させることでのみ変えられる。これは長期ではあり得そうもないが、短期では考えられる仮定である。
・生産関数
投入物(労働)と産出物(クッキー)の関係は生産関数と呼ばれる。
ここで、投入物を一単位追加したときに得られる生産物の増加量を「限界生産量」と呼ぶ。図を見るとわかるように、投入量が増えるにつれて、限界生産量は逓減している。これを「限界生産物逓減」という。これは労働者の数が増加するにつれて、工場内が混雑してくる。つまり後から加わった労働者それぞれの生産への貢献は小さくなるからである。
・生産関数から総費用曲線へ
上記の図は総費用曲線を表したものである。横軸には生産量をとっている。生産量が増加するにつれて、総費用曲線の傾きは急になるが、生産関数の傾きは緩やかになる。これはなぜなら、
生産量が多い→工場が多くの労働者で混雑している→限界生産物逓減を反映して、労働者を増やすことによる生産の増加分は減少する→生産関数の傾きは緩やかになる。
これを裏返すと、
工場が混雑する→生産を増やすにはより多くの労働の追加が必要になる→費用もその分かかるようになる→生産量が増加するにつれて、総費用曲線の傾きは急になっていく。
となるからである。
③費用のさまざまな尺度
・平均費用と限界費用
総費用を生産量で割ったものを「平均総費用」と呼ぶ。
総費用は固定費用と可変費用の合計なので、平均総費用は「平均固定費用」と「平均可変費用」の合計として表せる。つまり、
ATC=TC/Q (平均総費用=総費用/数量)
MC=⊿TC/⊿Q (限界費用=総費用の変化/生産量の変化)
となる。
・費用曲線とその形状
1.MC(限界費用)・・・限界費用は逓増する。生産量がすでに多い場合には、投入物を1単位増やしたときの限界生産物は小さく、生産量を1単位増やすための限界費用は大きい。
2.ATC(平均総費用)・・・平均総費用はU字型である。ATC=AVC+AFCであった。AFCは生産量の増加につれて減少する。AVCは限界生産物逓減のために、生産量の増加につれて通常は増大する。U字の底は、平均総費用が最小化される生産量に対応する。この生産量は、企業の効率的規模と呼ばれる。
MCとATCの関係を見よう。限界費用が平均総費用よりも小さい場合には平均総費用はつねに減少し、限界費用が平均総費用よりも大きい場合には平均総費用はつねに増加する。
この理由は以下の例から考えてみよう。平均総費用は成績の平均点、限界費用はつぎにとる授業科目の成績である。つぎの授業科目の成績がいままでの成績の平均点よりも低ければ、成績の平均点は下がる。逆であれば成績の平均点は上がる。これは平均総費用と限界費用の関係と同じである。
これはつまり「限界費用曲線は平均総費用曲線とその最小点において交わる」ということを意味する。
④短期と長期の費用
・短期の平均総費用と長期の平均総費用の関係
工場の規模さえ長期では可変費用(選べる)ので、長期においては、企業はどの短期の総費用曲線でも好きなものを選ぶことができる。
・規模の経済と規模の不経済
財の生産量が増加するにつれて長期平均総費用が低下するとき、規模の経済が働くという。逆に、財の生産量の増加とともに長期平均総費用も上昇するとき、規模の不経済が働くという。規模の経済は「分業」によって、規模の不経済は「調整問題」によっておこる。
マンキュー経済学 ミクロ編 ‐12‐
-税制の設計-
税制は効率的であり、かつ衡平であるべきである。しかしこれを達成することは難しい。
①アメリカ政府の財政の概観
②税と効率
効率と衡平を達成する目的を持つ税制が避けられない二つの費用は、
1.税が人々の意思決定をゆがめるときに生じる死荷重
2.納税者が税法に従うときに負う管理負担
である。効率的な税制とはこれら二つの費用が小さいものである。
・限界税率と平均税率
限界税率とは、所得が1ドル増加したときの税の支払の増加分である。
平均税率とは、税額の総額を総所得で割ったものである。
納税者がどれほど税の犠牲になっているかは限界税率、税制がどれほどインセンティブを歪めているかは平均税率で見ることが適している。
・一括税
すべての人が同じ額を税金を支払う税を一括税という。これは死荷重や管理負担を減らすにも関わら、なぜあまり多くみられないのだろうか。これはなぜなら貧しい人からも同じだけ税を徴収してしまうからだ。
③税と衡平
・応益原則
これは人々が政府サービスから受ける便益に基づいて税を支払うべきであるというものである。例えばガソリン税。ガソリン税の収入は道路の建設・維持にあてられる。ガソリンを買う人は道路を使用する人でもあるので、ガソリン税はこの政府サービスへの支払として公正な方法である。
・応能原則
これはどれだけの負担ができるかに応じて課税されるべきであるというものである。これは、高い支払能力を持つ納税者は、多くの金額を供出すべきであるという「垂直的公正」、同じような担税力をもつ納税者は、同じ金額を供出すべきであるという「水平的公平」の二つの系につながっている。