マンキュー経済学 マクロ編 ‐8‐

pp.216-246

 

・貯蓄、投資と金融システム

 

金融市場は貯蓄をする人が借り手に対して直接資金を供給できる市場である。中でも重要な市場は「債券市場」と「株式市場」の二つである。

 

債券市場で扱う債券とは、「借り手が債券の保有者に対して果たさなければいけない義務を明示した負債証明書」である。債券には、満期と利子率が明記されている。

 

債券の三つの特徴

①期間・・・債券に満期が来るまでの期間。満期までの期間が長い長期債は、そうでない短期債と比べてリスクが高い。よって長期債は短期債よりも利子率が高い。

 

②信用リスク・・・債券の発行者が利子や元本を払えなくなる可能性である。そのような事態を債務不履行(デフォルト)と呼ぶ。信用リスクが高ければ、購入者はその債券に対して高い利子率を要求する。

 

③税法上の取り扱い・・・債券が生み出す利子に対して、税法がどのような取り扱いをしているか。大抵の債券が「課税所得」とみなされるため、利子に対して税金を徴収される。対して地方債は税を払う必要がない。よって地方債は低い利子率が設定されている。

 

 

株式市場は会社の所有権を表すものである株式を取り扱う市場である。株式の発行による資金調達をエクイティファイナンスといい、債券の発行による資金調達をデッドファイナンスという。

 

株式は債券に比べ、所有者に対して高いリスクとリターンを提供する。

 

投資信託は「大衆に自社の株式を売り、その売り上げでさまざまな株式や債券などのポートフォリオを購入する機関である。投資信託の利点は少額でさまざまな資産に投資できることである。

 

・重要な恒等式

 

GDPを表す恒等式

Y=C+I+G+NX

であった。ここでこの経済が閉鎖経済であると想定すると、

Y=C+I+G

となる。この式をI(投資)について解くと、

I=Y-C-G

となる。この量は総生産から消費と支出を引いたものなので、「国民貯蓄」と呼ばれ、Sで表される。つまり、

S=Y-C-G

となる。これは貯蓄と投資が等しいことを指している。

政府部門が家計から集めた税金から、社会保障や生活扶助として家計に支払われる移転支払いを指し引いた額をTとすると、Sは、

S=(Y-T-C)+(T-G)

と表される。

(Y-T-C)は民間貯蓄、(T-G)は政府貯蓄を表すと考えられる。

 

S=Iというのは「経済全体として、貯蓄と投資は等しくなければいけない」ということを表している。この関係を成立させているのが、貯蓄と投資をつなぐ金融機関である。

 

マクロ経済学の用語では、投資とは「設備や建造物といった新しい資本を購入すること」を意味している。

 

・貸付金融市場

金融市場のモデルを考える。経済には貸付金融市場という一つの金融市場しかないと仮定する。貯蓄は貸付金融供給の源泉であり、投資は貸付金融需要の源泉である。これらをグラフで表すと以下のようになる。

 

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利子が増えれば貯蓄は増え、投資は減少する。よって以下のように利子率と貸付資金が決定される。この利子率は名目利子率ではなく、実質利子率を表している。

 

もしも利子所得に税金がかかるとすれば、貯蓄に対するインセンティブが低下してしまうため、経済の成長に不可欠な貯蓄が減少することになる。つまり、貯蓄が増加すると、その結果として利子率が低下し、投資は増加する。

 

もしも財政赤字が発生すれば、政府貯蓄が減少すると、政府は赤字の補填のために民間から借り入れを行うので、民間貯蓄が減少する。よって、供給曲線が左方にシフトし、利子率の上昇と、貸付資金の減少につながる。これをクラウディングアウトという。