マンキュー経済学 マクロ編 -14-

-開放経済のマクロ経済理論-

 

①貸付資金外国為替の需要と供給

開放経済で作用する諸要因を理解するために、貸付資金市場と外国為替市場に注目する。

 

・貸付資金市場

前章での恒等式から出発しよう。

S = I + NCO

左辺の貯蓄は貸付金融市場の供給、右辺の国内投資と純資本流出はその需要を示している。この貸付金融市場でも需要と供給のメカニズムが作動し、均衡実質利子率が決定される。この均衡利子率では、人々が貯蓄したいと思う量は、希望する国内投資量と純資本流出の合計とちょうど等しくなる。

 

外国為替市場

前章の恒等式から始めよう。

NCO = NX

これは外国資本資産売買の不均衡(NCO)が、財・サービスの輸入の不均衡(NX)に等しいことを示している。NCOとNXは外国為替市場における需要と供給を表す。

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このモデルでは、アメリカ人の日本車購入を「ドル需要量の減少」、日本人のアメリカ国債購入を「ドル供給量の減少」として扱う。

 

②開放経済における均衡

純資本流出(NCO)は実質利子率に依存する。実質利子率が上昇すればアメリカの資産を購入する魅力が増し、純資本流出が小さくなる。

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そして「貸付金融市場」と「外国為替市場」が結び付くことで、どのように開放経済の重要なマクロ経済変数が決定するか理解できる。

 

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③政策や出来事は開放経済にどのような影響を及ぼすか。

 

1.財政赤字

財政赤字が発生→貸付資金の供給減少→実質利子率上昇→純資本流出減少→外国通貨に交換されるドルの供給減少→実質為替相場の増価→貿易収支の悪化

 

2.貿易政策

関税や輸入割り当てなどの貿易政策はどのような影響を与えるか。

輸入割り当ての導入→ドルの需要増加→実質為替相場の増価

輸入が減少しても純輸出は変化しない。なぜなら輸入の減少で引き起こされる実質為替相場の増価によって、国内財が割高になり、輸入を刺激し輸出を減退させるからだ。これはつまり、「貿易政策は貿易収支に影響を及ぼさない」という事実を示す。輸出や輸入に対する政策は純輸出(輸出-輸入)には影響を与えない。

 

3.政治的不安定性と資本逃避

資本逃避→純資本流出の増大→貸付資金需要の増大→利子率の上昇→ドルの供給増加→ドルの減価

となる。