マンキュー経済学 ミクロ編 -6-

-需要、供給、および政府の政策-

 

この章では政府の政策がどのような効果をもたらすのかを分析する。

 

①価格規制

政府は法律である財の「価格の上限」と「価格の下限」を設定することができる。

 

1.価格の上限

価格の上限は均衡価格よりも高く設定される場合と、低く設定される場合がある。前者の場合は市場に影響を与えることはない。しかし後者のときには市場は均衡価格に到達せず、それよりも低価格で取引されることになるので、超過需要と過少供給が生じる。

ケーススタディとして、「短期と長期における家賃規制」をみよう。家賃規制の影響は長期においてより強く表れる。短期においては供給側は価格に反応して供給量を調節することはできないが、長期においてはより柔軟に価格に対応した供給量が選択され、結果として住宅不足が顕在化する。

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2.価格の下限

価格の下限も均衡価格より高く設定される場合と低く設定される場合があるが、今回は後者が市場に影響を与える。均衡価格よりも高く取引されることになるため、財の余剰が生まれてしまう。

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②税金

政府がある財に課税を行うとき、その税額を負担するのは売り手と買い手のどちらだろうか。これは単純に法律を調べることで答えを得られるような単純な問いではない。経済学者はこれを「税の帰着」という用語で議論する。

 

・買い手に対する課税

ある財の市場で政府が買い手に0.5ドルの課税を定めたとしよう。これはどのような影響を市場に与えるか。

1.課税はまず需要曲線を0.5ドル分下方にシフトさせる。

2.新たな均衡では取引量は減る。均衡価格は2.8ドルへ下がる。

3.これは元の均衡より取引量が0.2ドル低いので売り手の厚生を悪化させる。さらに買い手は3.3ドルを払うので彼らの厚生も悪化する。

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・売り手に対する課税

今度は売り手に対して課税をしてみよう。するとどうなるだろうか。

1.供給曲線は上方へ0.5ドル分シフトする。

2.新たな均衡では取引量は低下し、均衡価格は上昇する。

3.ここでも買い手は3.3ドルを払い、売り手は2.8ドルの売り上げを得ることになる。

 

これより売り手と買い手への課税が同等の意味を持つことが分かる。

 

・弾力性と税の帰着

税負担の分配は需要と供給の価格弾力性によって決定される。需要が非弾力的なときは買い手が税を多く負担し、供給が非弾力的なときは売り手が税を多く負担する。

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