マンキュー経済学 ミクロ編 -9-

-応用:国際貿易-

 

国際貿易は経済的福祉に対してどのような影響を及ぼすのだろうか。

 

①貿易の決定要因

・貿易がないときの均衡

架空の国「アイソランド」の鉄鋼市場が世界から隔離されているとしよう。この場合、総余剰は国内需要と国内供給によって決定されている。ここでアイソランド政府は鉄鋼市場での貿易を考慮にいれ、状況の分析を始めた。

 

・世界価格と比較優位

世界市場で成立している価格を「世界価格」という。これと国内価格を比べて、前者の方が高い場合には、アイソランドは鉄鋼の輸出国に、逆の場合には鉄鋼の輸入国になる。

 

②貿易による勝者と敗者

・輸出国の場合

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貿易が開始されると国内価格と世界価格は一致する。図は世界価格が高い場合の市場である。この場合、鉄鋼の国内生産者は高い価格で鉄鋼を売ることができるようになるので厚生が改善するが、国内の消費者は高い価格で鉄鋼を買わなければいけないので厚生が悪化する。つまり、消費者の厚生が生産者の厚生へと転化され、さらに網掛け部分の厚生が追加される。

 

・輸入国の場合

輸入国の場合は上記の例と正反対のことがおきる。つまり国内価格は下落し、消費者は生産者の厚生を横取りし、総余剰は増加する。

 

・関税の影響

輸入材への課税、すなわち関税の影響を考えてみよう。関税は財の輸出国には関係がない。なぜなら誰も財を輸入しないからである。

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輸入国における関税は上記の図のような影響を与える。つまりEが政府収入となり、DとEの部分が死荷重となってしまう。

 

・輸入割当ての影響

アイソランド政府が限定数の輸入許可証を配分するとしよう。すると以下の図のようになる。

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つまり許可証保有者の余剰はE’とE’’だけ増加し、DとEだけの死荷重が発生する。

 

③貿易制限を支持する議論

自由貿易に対する反対にはどのような議論があるのだろうか。

 

・雇用の議論

まず彼らは国内の雇用が失われると主張する。しかしこれは短期的には当てはまるが、長期的には当てはまらない。なぜなら外国はアイソランドとの貿易でアイソランドから他の財を購入するための資源を得ることになるからだ。失業した労働者は長期的には比較優位のある産業に移動すればいい。

 

・安全保障の議論

過度な外国経済への依存は安全保障の面から問題であるとする議論がある。しかし経済学者はこの議論が自らの利益を死守したい生産者に悪用されているのではないかと危惧している。

 

幼稚産業

初期段階にある産業を保護することで、後の稼ぎ頭に育てようとする話はある。しかし実際には将来どの産業が勝ち組となるかを選定するのは非常に難しい。

 

・不正競争の議論

もしかすると他国は鉄鋼産業を手厚く保護しているため、世界市場においてアイソランドは損をしてしまうかもしれない。しかしこの場合にも国内の消費者は安い外国産鉄鋼を享受できるので、結局は得をするのだ。

 

・交渉力としての保護の議論

交渉の脅しとしての保護貿易は実際にはよく使われる。