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マンキュー経済学 マクロ編 -13-

-生産の費用-

 

本章では企業の行動をより詳細に調べる。さらに価格や数量に関する企業のけっていがどのように市場条件に依存するかを研究する産業組織論の分野を紹介する。このとき、企業の費用は生産や価格を決定する際の重要な決定要因である。

 

①費用とは何か

・総収入、総費用、および利潤

企業が生産物の販売によって得る金額のことを総収入という。企業が投入物に支払う金額のことを総費用という。利潤は企業の総収入から総費用を差し引いたものである。

 

機会費用としての費用

経済学では企業の生産費用について話す際には、財・サービスの生産を行う際のすべての機会費用を含んでいる。費用の中には、お金の支払を伴う「明示的費用」とお金の支払を伴わない「潜在的費用」がある。

 

機会費用としての資本費用

会計士はこの明示的費用のみにスポットを当てるが、経済学者はそうではない。例えば、A氏がB氏から工場を買い取るために30万ドルを支出したとしよう。もしそうせずに、ヘレンがそのお金を5%の利子が付く定期預金に預けておけば、彼女は年間15000ドルを得ることができた。経済学者はこの年15000ドルも、工場を買い取るための費用と考える。

 

・経済学上の利潤と会計上の利潤

会計士は潜在的費用を考慮しないので、経済学上の利潤とは異なる額がはじき出される。

 

②生産と費用

企業の生産過程と総費用の関係を調べよう。ヘレンの工場を例にして考える。この工場の規模は固定されており、クッキーの生産量は労働者の数を変化させることでのみ変えられる。これは長期ではあり得そうもないが、短期では考えられる仮定である。

 

・生産関数

投入物(労働)と産出物(クッキー)の関係は生産関数と呼ばれる。

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ここで、投入物を一単位追加したときに得られる生産物の増加量を「限界生産量」と呼ぶ。図を見るとわかるように、投入量が増えるにつれて、限界生産量は逓減している。これを「限界生産物逓減」という。これは労働者の数が増加するにつれて、工場内が混雑してくる。つまり後から加わった労働者それぞれの生産への貢献は小さくなるからである。

 

・生産関数から総費用曲線へ

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上記の図は総費用曲線を表したものである。横軸には生産量をとっている。生産量が増加するにつれて、総費用曲線の傾きは急になるが、生産関数の傾きは緩やかになる。これはなぜなら、

 

生産量が多い→工場が多くの労働者で混雑している→限界生産物逓減を反映して、労働者を増やすことによる生産の増加分は減少する→生産関数の傾きは緩やかになる。

 

これを裏返すと、

 

工場が混雑する→生産を増やすにはより多くの労働の追加が必要になる→費用もその分かかるようになる→生産量が増加するにつれて、総費用曲線の傾きは急になっていく。

 

となるからである。

 

③費用のさまざまな尺度

固定費用可変費用

総費用は固定費用可変費用に分けることができる。

 

・平均費用と限界費用

総費用を生産量で割ったものを「平均総費用」と呼ぶ。

総費用は固定費用可変費用の合計なので、平均総費用は「平均固定費用」と「平均可変費用」の合計として表せる。つまり、

 

ATC=TC/Q (平均総費用=総費用/数量)

 

MC=⊿TC/⊿Q (限界費用=総費用の変化/生産量の変化)

 

となる。

 

・費用曲線とその形状

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1.MC(限界費用)・・・限界費用は逓増する。生産量がすでに多い場合には、投入物を1単位増やしたときの限界生産物は小さく、生産量を1単位増やすための限界費用は大きい。

 

2.ATC(平均総費用)・・・平均総費用はU字型である。ATC=AVC+AFCであった。AFCは生産量の増加につれて減少する。AVCは限界生産物逓減のために、生産量の増加につれて通常は増大する。U字の底は、平均総費用が最小化される生産量に対応する。この生産量は、企業の効率的規模と呼ばれる。

 

MCとATCの関係を見よう。限界費用が平均総費用よりも小さい場合には平均総費用はつねに減少し、限界費用が平均総費用よりも大きい場合には平均総費用はつねに増加する。

 

この理由は以下の例から考えてみよう。平均総費用は成績の平均点、限界費用はつぎにとる授業科目の成績である。つぎの授業科目の成績がいままでの成績の平均点よりも低ければ、成績の平均点は下がる。逆であれば成績の平均点は上がる。これは平均総費用と限界費用の関係と同じである。

 

これはつまり「限界費用曲線は平均総費用曲線とその最小点において交わる」ということを意味する。

 

④短期と長期の費用

・短期の平均総費用と長期の平均総費用の関係

ある費用が固定費用可変費用かは期間に依存する。

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工場の規模さえ長期では可変費用(選べる)ので、長期においては、企業はどの短期の総費用曲線でも好きなものを選ぶことができる。

 

・規模の経済と規模の不経済

財の生産量が増加するにつれて長期平均総費用が低下するとき、規模の経済が働くという。逆に、財の生産量の増加とともに長期平均総費用も上昇するとき、規模の不経済が働くという。規模の経済は「分業」によって、規模の不経済は「調整問題」によっておこる。