『経済学で出る数学』 2次関数と独占・寡占市場

2.1 独占市場に見るトレードオフ

 

・前章の分析は「プライステイカーの仮定」に基づいていた。それは全ての市場参加者は価格を所与のものとして行動するというものだ。しかし独占や寡占など生産者が極端に少ない場合は、この仮定に当てはまらない場合がある。

 

トレードオフの関係は2次関数で表すことができる。つまり増加する部分と減少する部分のバランスをいかにとりながら利潤を最大化していくかという問題である。

 

・企業の価格差別行動によって、需要が高い地域では高い価格、需要が低い地域では低い価格というような差がつけられる場合がある。

 

2.2 寡占市場を斬るゲーム理論

 

・寡占市場においても企業は独占市場と似たようなトレードオフに面している。しかし寡占市場では「個々の企業の利潤関数のグラフが相手企業の生産量に応じて変化してしまう」という点が異なる。このような状況を分析するときに「ゲーム理論」を用いる。

 

ゲーム理論によってもたらされる解は「ナッシュ均衡」と呼ばれ、「相手プレーヤーたちの戦略が変わらないときに、自分一人だけ戦略を変えても利得が増えないような戦略の組合せ」を指す。

 

・寡占市場での数量競争のゲームを「クールノー・ゲーム」と呼ぶ。

 

2.3 もう少し練習

 

・寡占市場では独占市場と比べて価格、各企業の生産量、利潤、企業の総利潤が下がる一方で、企業の総生産と消費者余剰が増加する。

 

・完全競争市場では、消費者の「追加的な供給への支払許容額」と生産者たちの「追加的な供給に必要なコスト(限界費用)」が市場価格を通じて一致するが、寡占市場では一般に、そのようなメカニズムが働かず価格が限界費用を上回るため社会厚生上の損失が発生する。

 

・もし参入コストが充分小さく、新規企業がどんどん参入できる環境ならば、価格は限界費用に近づいていく。