『政治の急所』 飯島勲

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昨日、空いた時間にKindle版を購入し読了。

 

小泉内閣の重要人物として暗躍した秘書官である飯島氏の政治論。時局に対する彼の評論も面白く読めるが、個人的に興味深かったのが人間の機微を捉える氏の観察眼だ。

 

たとえば本書にはドイツのシュレーダー元首相についてこんな話が載せられている。

 

ドイツのゲアハルト・シュレーダー首相は、あれだけ力のある首相でありながら、南ドイツで全く人気がなかった。どうしてかと調べたら、なんのことはない、ワーグナーの楽劇を演目とする伝統あるバイロイトの音楽祭にワーグナー家が招待状を出したのに、シュレーダーが欠席したっていうんだよ。首相で欠席したのは初めてらしい。

~中略~

そこで小泉首相ワーグナー家に密かに連絡させて、自分を招待してくれたら必ず行くと伝えたわけさ。そして招待状が官邸に届いたから、すぐ駐ドイツ大使に、「シュレーダーに道案内してくれないかと頼めば絶対飛びつくはずだからやってみろ」と言ったら、案の定、飛びついた。

~中略~

一緒に音楽祭を鑑賞したシュレーダーはそれ以降、南ドイツでも人気が出たそうだ。

 

このエピソードには、人間の卑近で微小だが重要な感情の動きを見逃さずに、政治のテコとして利用する氏のセンスが凝縮されているように思える。

 

飯島氏がいわゆるフィクサーとして大きな力を持つようになった背景には、恐らく細かな点に気づき、配慮を行ってきた積み重ねがあるに違いない。彼のこうした部分は田中角栄に近いものを感じる。

 

こうした政界にほとんど関係のない一般人にとっても、この本の内容は有益だ。特に終章の「政治のリーダーシップとは」には、人を動かすための単純だが本質的なアイデアが書かれている。

 

自分も社会人の端くれとして、氏のような観察眼を養っていきたい。それは大いにセンスに左右されるものであるようにも思えるが…