『テキストブック 金融入門』 ②銀行による貨幣の供給
第二章 銀行による貨幣の供給
1.貨幣の供給
・私たちに現金が供給される仕組みは、まず銀行が日銀当座預金口座から必要な現金を引き出し、それが現金輸送車で銀行に運ばれる。これを私たちは窓口やATMで下すことにより、私たちの手に現金が供給される。
・預金を需要しているのは私たち非銀行部門であり、預金を供給しているのは銀行である。
・2008年の銀行の要求払い預金残高は266兆円だが、銀行全体が保有していた財産は9兆円で、要求払い預金の3.6%にしか満たない。
・銀行が容易しておかなければいけない現金量は、純現金流出額と呼ばれ、現金の流出額-現金の流入額で表される。これは大数の法則が働き、とても小さいものとなる。
・AさんがZ住宅の住宅代金を払うのに、銀行が貸し出しをしたとする。銀行はAさんの口座に1000万円を入金する。もしもZ住宅がその銀行に口座を持っていれば、銀行はさらにAさんの口座からZ住宅の口座へ振り替えをすることになる。銀行は貸し出しによって積極的によお金を供給することができ、これは預金創造と呼ばれる。
・銀行は証券を購入することによって預金を供給することもできる。
2.決済システムの安定化政策
・銀行が回収できなくなった貸し出しを不良債権という。
・銀行が取り付けを防ぐために現金を増やす方法として、①保有している日銀当座預金を引き出して現金に換える、②銀行が持っている手形や国際などの証券を売却する、③他行から資金を借りる、④新たな貸し出しを行わないの方法がある。
・銀行取り付けは他行へ伝染する。
・預金の振り替え・振り込みによって決済が使えなくなる状況を決済システムの崩壊といい、崩壊のリスクをシステミック・リスクという。
・このリスクに対処するのは日銀で、①銀行が持っている証券を買いとる、②銀行に資金を貸し出すという方法がある。よって中央銀行は最後の貸し手と呼ばれる。
・平時の安定化政策として、銀行が過度な貸し出し競争を行わないように、競争制限的規制がなされる。具体的には①参入規制、②預金金利規制、③店舗規制などがある。
・これらの規制は既存の銀行には超過利潤(規制レント)を与える。
・1980年以降には金融自由化が進んだ。
・決済システムのセーフティーネットとして預金保険制度がある。しかしこれは預金保険にともなうモラルハザードの問題から、一定額以下の預金の保証に限定している。
・1000万円以上の大口預金者は、銀行の経営が健全であるかを監視する。これを市場による銀行経営の監視という。
・自己資本の価値 ≡ 株主資本の価値 ≡ 資産価値-負債価値
・銀行にとっての負債とは預金のため、自己資本比率が高い銀行ほど、預金の安全性が高い。
・国債のリスクは0である。
・海外に拠点をもつ銀行は、BIS規制によって自己資本比率を8%以上に保つ必要がある。
・不健全銀行には隔離政策を行う。
練習問題
A1.銀行は預金者の要求に応じて預金の現金化に対応するとともに、振り替え・振り込みによる決済を提供するサービスを私たちに提供していると考えられるから。
A2.創造されない。サラ金からお金を借りると、サラ金の預金は減り、借りた人の預金が増えるだけなので、社会全体としてはお金が増えていないから。
A3.①持っている手形を売却する。②日銀当座預金を通して他行から資金を借りる。③中央銀行から借りる。
A4.上記の方法により保有現金を増やした。
A5.銀行はハイリスクハイリターンな融資を行い、預金者は高利子を目当てにそうした銀行を利用する。
A6.モラルハザードが起きないようにするため。
A7.銀行の自己資本比率をもとに健全性を判断し、問題のある銀行には早期に改善するように勧告することで、取り付け騒ぎの伝染を防止する。