マンキュー経済学 マクロ編 -11-

ー貨幣システムー

 

貨幣は紙切れだが、複雑な経済においては極めて有益なアイテムである。もしも貨幣が存在しなければ、人々は物々交換で自らの欲しいものを獲得しなければいけないが、このときには「欲求の二重一致」が必要になる。これはなかなか大変なことで、貨幣はそうした問題を解決してくれる。

 

・貨幣の意味

経済学者は貨幣を「人々が他の人々から財・サービスを購入するときに通常用いられる、経済における諸資産の集合」と定義する。

 

貨幣は経済の中で、①交換手段、②計算単位、③価値貯蔵手段、の三つの役割を果たしている。経済学者は「流動性」という言葉で、資産が経済の交換手段に変換される際の容易さを示す。例えば株式や債券は流動性が高く、不動産や絵画は流動性が低い。どのような資産を保有するかは、この流動性と価値貯蔵手段としての有用性を天秤にかける必要がある。

 

・貨幣の種類

本源的価値をもつ商品の携帯をとる貨幣を「商品貨幣」と呼ぶ。そして本源的価値をもたない貨幣を「不換紙幣」と呼ぶ。

 

中央銀行

中央銀行は、①民間銀行の規制、②貨幣供給の調節、の二つの役割をもつ。

 

・銀行と貨幣供給

銀行が貨幣供給において果たす機能を理解するために、通貨の預かりだけを行う「100%準備銀行」を想定しよう。この銀行は顧客からの預金を準備として保有しているだけなので、貨幣供給に影響を与えることはない。

 

では、この銀行が融資を始めて「部分準備銀行」となった場合を考える。総預金のうち銀行が準備として保有する額の比率は「準備率」といい、政府や中央銀行が定めた準備の最低額を「法定準備」という。

 

銀行が準備率10%で事業を行うとする。そしてその銀行には100ドルを預ける預金者一人がいるとする。この場合、銀行は10ドルを準備として保有し、残りの90ドルを貸し出す。この場合、経済全体には190ドルの貨幣が存在することになる。つまり銀行が貨幣を創造しているのだ。

 

銀行から融資を受けた人が、その貨幣を他の銀行に預けることでさらに経済全体の貨幣が増加していく。100ドルを預けた場合に最終的な貨幣供給の総額は1000ドルとなる。準備1ドルにつき銀行システムがどれだけ貨幣を創造するかということを「貨幣乗数」と呼ぶ。貨幣乗数は準備率の逆数である。つまり、準備率が高いほど貨幣乗数は小さくなり、貨幣供給は減少する。

 

中央銀行は貨幣供給調節手段として、①公開市場操作、②預金準備率、③公定歩合、の三つを持っている。

 

公開市場操作・・・民間の国債を売買することで貨幣供給を調節する。

②預金準備率・・・預金準備率を操作し、貨幣乗数を調節する

公定歩合・・・民間銀行に貸付を行う場合の利子率を変更し、貨幣供給を調節する。