マンキュー経済学 マクロ編 -13-

-開放マクロ経済学:基本的概念-

 

・財と資本の国際フロー

開放経済では①生産物市場での財・サービスの売買②金融市場での資本資産の売買が行われる。

①では輸出が輸入より多ければ貿易黒字、少なければ貿易赤字、同じならば貿易収支均衡という。

②では「純資本流出」という用語がある。これは国内居住者による外国資産の購入から非居住者による国内資産の購入を引いたものを示す。(対外純投資とも)

この純資本流出に影響を与える要因として、①国内資産に支払われる実質利子率②外国資産を保有することによって認識される経済的・政治的リスク③外国人による国内資産の所有に影響を与える政府の政策、がある

 

・純輸出と純資本流出の均等

純資本流出(NCO)はつねに純輸出(NX)に等しい。これはつまり、ある国によって販売された財・サービスの順価値(NX)は、取得された資産の純価値(NCO)に等しいということを示している。

 

・貯蓄・投資・およびこれらの国際的フローの関係

貯蓄や投資と国際的フローとの関係を考えてみよう。

 

Y=C+I+G+NX

を変形して、

Y-C-G=I+NX

左辺は国民貯蓄(S)を表したから、

S=I+NX

となる。またNX=NCOより、

S=I+NCO

とも書ける。これは貯蓄が、国内投資や外国資本の購入に充てられることを示している。

 

・実質為替相場と名目為替相場

名目為替相場とは、ある国の通貨を他の国の通貨と取引できる相場のことである。1ドルで買えるドル以外の通貨の増加は「ドルの増価」といい、その逆を「ドルの減価」という。

実質為替相場は、ある国の財・サービスと他の国の財・サービスを取引する際の相場である。たとえば、スイスのチーズ1ポンドが、アメリカのチーズ1ポンドの2倍の値段だったとする。その場合の実質為替相場は「アメリカのチーズ1ポンドあたりスイスのチーズ1/2ポンド」と表す。式で表せば、

 

実質為替相場=名目為替相場×国内価格/外国価格

 

となる。アメリカのバスケットの物価指数(P)、外国のバスケットの物価指数(P*)、ドルと他国通貨の名目為替相場(e)とすれば、

 

実質為替相場=e×P/P*

 

となる。ある国の実質為替相場は、財・サービスの純輸出の重要な決定要因である。

 

購買力平価

為替相場の変動を説明する理論の一つが購買力平価(PPP)である。購買力平価説は同じ物は同じ価格で売られているという一物一価の法則に基づく。もしそうでなければ差額の取引によって儲かる裁定が行われるはずだからだ。これを国際市場に応用すれば、最終的にはすべての国において1ドルで同じ物が購入できるようになるはずである。

 

これを数式で表せば、

 

1/P=e/P*

つまり

1=eP/P*

そして

e=P*/P

 

となる。つまり購買力平価説に従えば、2国の通貨の間の名目為替相場は、これらの国の物価水準の相違を反映するはずである。しかし実際には、貿易が容易でなかったり、他国では代替不可能な財が存在したりするので、この仮説は正確ではない場合がある。