マンキュー経済学 ミクロ編 -8-

-応用:課税の費用-

 

この章では課税が厚生に与える影響を考えてみる。結論としては書いてと売り手が負担する課税の費用は、政府の収入を上回る。

 

①課税の死荷重

課税による政府の税収は下図1のT×Qで表せる。下図2を見てみよう。課税がない場合の市場における総余剰はA+B+C+D+E+Fで表せる。しかし課税によって総余剰はC+Eだけ減少してしまう。そしてこの部分は政府の収入になるわけでもないので、結果として総余剰は少なくなってしまう。この減少分を死荷重と呼ぶ。

 

このことを例を通して理解しよう。AがBの家を毎週100ドルで掃除する。Aの機会費用は80ドルで、Bの支払許容額は120ドルとすれば、この取

引から40ドルの総余剰が生まれていることになる。ここで政府が50ドルの課税を行うとしよう。こうなるとBがAに払える金額の中で両者とも得をするような取引は存在しない。Bの支払許容額は120ドルだが、仮にその額を払ったとしてもAの機会費用70ドルを下回る。よってAとBは取引を停止してしまい、40ドルの総余剰は失われてしまう。

 

②死荷重の決定

課税による死荷重の大小は需給の価格弾力性によって決まる。

 

a.非弾力的供給→死荷重は小さい

b.弾力的供給→死荷重は大きい

c.非弾力的需要→死荷重は小さい

d.弾力的需要→死荷重は大きい

 

価格に敏感な需要者と供給者のほうが、課税による市場からの退出が増えることになるので、これは当然の結論となる。

 

③税が変化した場合の死荷重と税制

税が大きくなると、死荷重はそれを上回る速さで大きくなる。なぜなら死荷重は三角形の面積であり、税の大きさの二乗に比例するからだ。また税が大きくなると税収の増加はマイナスの二次関数で表される。つまり税収を最大化する税額が存在することになる。