『入門経済思想史 世俗の思想家たち』 ロバート・ハイルブローナー

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経済学思想史の本。アダム・スミスマルサスリカードマルクス、ヴェブレン、ケインズシュンペーターなどなど数多くの経済学者たちの思想を紹介している。理路整然として、鋼鉄のような装いの経済哲学だけでなく、彼らの波乱万丈の人生も含めて、ハイルブローナーの清濁併せ呑む筆致で描いているため、ぐいぐい読み進めることができる。

一番興味をもった経済学者はケインズだった。政府の役人をする片手間に数学の論文を書き、株で大儲けして、レストランを経営し、晩年にはイングランド銀行の理事も務めたって、すごいヴァイタリティだ…。

 

本の中にあった『一般理論』についての部分を簡単にまとめておきます。

 

1929年に起きた大恐慌は既存の経済学では説明できないものだった。古くからの経済学によれば、人々が消費を控えるデフレ下では、貯蓄が増えるため、利子率が下がり、投資が活発になる。つまり需要と供給の市場メカニズムが貨幣においても機能するため、経済の規模は縮小するかもしれないが、必ず不況から自然と脱出するだろうと考えられていた。

 

しかし実際にはそうはならなかった。いつまで経っても失業はなくならず、経済は不況から脱出できなかった。この状態をケインズは『一般理論』において次のように説明した。

 

『だって不況で金がないんだから、みんな貯蓄できるわけないじゃん』

 

実際に1932年と1933年にはアメリカ市民は1ドルも貯金していなかった。貯蓄が増えないのだから、利子率が下がり、投資が活発になることはなかった。つまり、不況下でも経済状態は均衡になりうるのであった。